タイトル
第38巻第2号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

下大静脈腫瘍塞栓を形成しBudd-Chiari症候群をきたした小細胞癌の1例

出村 芳樹, 塩崎 晃平, 中西 正教, 飴島 慎吾, 石崎 武志, 宮森 勇
福井医科大学第3内科

68歳男性,下腿浮腫・頸部及び縦隔に多発性リンパ節腫張を指摘され当院受診.頸部リンパ節生検にて小細胞癌と診断された.全身検索の結果,肝・副腎に血行性転移と思われる病変を認めたが,消化管・骨盤腔など胸部以外に原発巣と思われるところがなく,肺小細胞癌ED症例と考えられた.肝・副腎腫瘍及び下大静脈内腫瘍塞栓により肝部下大静脈閉塞を生じており,下腿浮腫,表在静脈怒張,肝腫大の急速な進行を認め急性型Budd-Chiari症候群を来たしたと考えられた.化学療法が一旦は効果を示したが,最終的には急性型Budd-Chiari症候群の再発にて約半年の経過で亡くなった.肺癌のBudd-Chiari症候群合併例は稀であり,本症例の様に小細胞癌でBudd-Chiari症候群を来たした報告は我々の検索した限りではみられず,貴重な症例と考え報告した.
索引用語:Small cell carcinoma, Budd-Chiari syndrome, Inferior vena cava obstruction, Lung cancer, Tumor thrombus

受付日:1997年11月17日
受理日:1998年2月5日

肺癌 38 (2):159─165,1998

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