タイトル
第38巻第2号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

肺扁平上皮癌術後に孤立性広背筋転移をきたした1例

山下 良平, 春原 哲之, 家接 健一, 小杉 光世
市立砺波総合病院外科

原発性肺癌の骨格筋転移は極めてまれである.今回我々は,肺扁平上皮癌術後に,孤立性の広背筋転移をきたした症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は68歳男性,95年12月21日,右肺S3末梢の扁平上皮癌で上葉切除術施行.病理病期はT1N1M0,stage IIであった.術後経過良好であったが,96年8月,後側方切開創痕の約5 cm尾側で肩甲線上に径4 cmの皮下腫瘤を触知した.CT上,右広背筋内によくenhanceされる限局性腫瘤を認めた.吸引細胞診で扁平上皮癌と診断され,8月21日,局所麻酔下に腫瘍を切除した.病理組織学的に骨格筋内に中分化扁平上皮癌の浸潤巣を認め,肺癌の広背筋転移と診断された.術後,CDDP+5FUによる化学療法を2コース行った.97年9月現在,新たな再発の徴候なく健在である.肺癌の骨格筋転移については,本邦ではこれまで9例の報告があるが,いずれも予後不良である.自験例でも今後,厳重な経過観察が必要と考えている.
索引用語:Lung cancer, Skeketal muscle metastasis

受付日:1997年9月17日
受理日:1998年3月20日

肺癌 38 (2):177─181,1998

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