タイトル
第38巻第3号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

下垂体転移による尿崩症を合併した肺腺癌の1例

廣瀬 敬, 富永 慶晤, 森 清志, 町田 優, 古田 雅也, 築山 巌
栃木県立がんセンター呼吸器科, 同 放射線治療部

下垂体転移による尿崩症を合併した肺腺癌の一例を報告する.症例は63歳の男性で,1日4~5 lの多飲・多尿を主訴に受診した.尿比重1.003,尿浸透圧102 mOsm/kg, 血清浸透圧298 mOsm/kg,血清ADH0.7 pg/ml で,飲水制限試験にて血清浸透圧313 mOsm/kg,尿浸透圧137mOsm/kgで,尿浸透圧/血清浸透圧は1以下のままでかつADH値も0.8 pg/ml と無反応であることより尿崩症と診断した.下垂体前葉ホルモン値には異常を認めなかった.血清CEA高値で,胸部異常影を認め精査にて肺腺癌と診断した.頭部単純X線ではトルコ鞍底・鞍背の骨破壊像を認めた.頭部MRI(T1強調像)では下垂体後葉に腫瘤影と骨破壊像を認め,同部の高信号の消失も認めた.肺腺癌の下垂体転移と診断し,トルコ鞍部に放射線照射後,シスプラチンとイリノテカンの抗癌剤治療を施行したが,症状の改善および腫瘍の縮小は認められなかった.
索引用語:Lung cancer, Diabetes insipidus, Pituitary metastasis

受付日:1998年3月6日
受理日:1998年4月8日

肺癌 38 (3):229─233,1998

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