タイトル
第38巻第4号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

血清CEAが著明な高値を呈したにもかかわらず治療が奏功した肺大細胞癌の1例

佐藤 修二, 朝倉 潤, 平野 純, 鈴木 英之, 秋葉 直志, 山崎 洋次
東京慈恵会医科大学外科

症例は52歳の男性,咳嗽と喀痰を主訴に近医を受診し,胸部X線写真で左上肺野に腫瘤陰影を指摘され当院を紹介された.入院時のCEA値は352.9 ng/ml であった.経皮的細胞診で非小細胞肺癌と診断した.胸部CTでは腫瘍は縦隔への浸潤を認め,また両側上縦隔のリンパ節の腫大を認めた(cT3N3αM0,stage IIIB),Induction chemotherapy後,胸骨縦切開に前側方切開を加えて左上葉切除および両側縦隔郭清を施行した.病理組織所見は大細胞癌で,リンパ節転移は認めなかった(ypT3N0M0,stage IIB),また腫瘍の縦隔浸潤部の切除断端は陽性と診断し,放射線照射50 Gyを追加した.これらの治療によりCEA値は正常範囲内まで低下を認めた.手術後2年4ヵ月が経過したが,再発やCEAの再上昇は認めていない.本症例はCEA値が著明な高値を呈したにもかかわらず,治療が奏功した比較的まれな症例と思われる.
索引用語:Lung cancer, Large cell carcinoma, Induction chemotherapy, CEA, Bilateral mediastinal dissection

受付日:1998年3月25日
受理日:1998年6月9日

肺癌 38 (4):335─340,1998

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