タイトル
第38巻第6号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

浸潤性胸腺腫との鑑別が困難であった縦隔原発Hodgkin病の1例

佐澤 由郎, 川村 光夫, 鈴木 一郎, 折野 公人
明和会中通総合病院呼吸器外科

前縦隔に発生した悪性リンパ腫(ホジキン病)の1例について報告した.症例は36歳女性で胸部異常陰影のため当院入院となった.胸部CT写真では腫瘤は前縦隔にあり,上大静脈と右肺に浸潤しており,浸潤性胸腺腫が疑われた.経皮針細胞診にて診断がつかなかったため,前側方切開による開胸生検が行われ,組織標本より悪性リンパ腫ホジキン病(結節硬化型)と診断された.その後化学療法(ABVD療法)が10クール行われ,腫瘍は著明に縮小しCR(complete remission)と判定された.本邦では縦隔発生の悪性リンパ腫の報告は非ホジキンリンパ腫が大部分で,ホジキン病の報告はまれである.放射線が有効な浸潤型胸腺腫と化学療法が治療の主体となるリンパ腫では,治療方法が異なることからその鑑別は重要である.
索引用語:Mediastinal tumor, Hodgkin's disease

受付日:1998年7月13日
受理日:1998年8月31日

肺癌 38 (6):727─731,1998

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