タイトル
第38巻第7号目次 Japanese/English

─ 原著 ─

肺癌治療における放射線食道炎の臨床的検討

鈴木 道明, 小林 淳, 北村 諭
自治医科大学呼吸器内科

肺癌治療による放射線食道炎について,自験症例の臨床的検討を行った.対象は1990年1月から1995年12月までの6年間に原発性肺癌のため当科に入院し,食道を含む胸部に放射線照射(1日2回)を行った62例である.総線量は平均55.6Gyで,48例(77%)において照射開始後平均29.7 Gyで咽頭部痛,食道嚥下痛などの症状が認められた.照射前化学療法施行群(n=46)では87%に発症が認められ,50%に発症した非施行群(n=16)より有意に高率であった(p<0.05).粘膜保護剤を予防的に内服していた27例においても22例(81%)が食道炎を発症した.発症後の主な治療は粘膜保護剤の内服開始または追加であったが,これにより症状が改善したものは6例のみであった.症状の悪化による照射中止は2例,中心静脈栄養施行例は1例であった.高頻度に発症する本症に対し,現行の治療では不十分と考えられるため,より効果的な治療や予防対策を検討する必要がある.
索引用語:Radiation esophagitis, Primary lung cancer

受付日:1998年4月24日
受理日:1998年9月21日

肺癌 38 (7):807─813,1998

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