タイトル
第38巻第7号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

胸腺腫と鑑別を要した胸腺癌 針生検における免疫組織化学の有用性

斎藤 雄史, 山川 洋右, 桐山 昌伸, 深井 一郎 , 近藤 知史, 藤井 義敬, 立山 尚, 栄本 忠昭
名古屋市立大学第2外科学教室, 同 第2病理学教室

術前針生検にて胸腺腫と診断された胸腺癌を2例経験した.いずれの症例も,針生検HE標本では,軽度の細胞異型を認める上皮性腫瘍で,通常胸腺癌には見られないリンパ球浸潤を伴っており,atypical thymomaと診断されたが,術後病理HE標本では明らかな扁平上皮癌であった.抗bcl-2およびMIB-1抗体を用いて,これら2症例の針生検標本の免疫組織染色を行った.対照として,術前針生検標本の検討可能な胸腺腫4例を用いた.抗bcl-2抗体により,胸腺癌では細胞質が強く染色されたのに対し,胸腺腫のbcl-2染色はほとんどみられなかった.MIB-1抗体による染色指数は胸腺腫1.0~3.6%,胸腺癌14.0,14.6%と胸腺癌で高値を示した.術前針生検の小さな切片では,胸腺腫と胸腺癌との鑑別が困難な事があり,bcl-2やMIB-1の染色が両者の鑑別の補助となりうることが示唆された.
索引用語:Thymoma, Thymic carcinoma, Needle biopsy, bcl-2, MIB-1

受付日:1998年4月30日
受理日:1998年11月5日

肺癌 38 (7):863─870,1998

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