タイトル
第39巻第1号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

肺炎様浸潤影を呈した細気管支肺胞型腺癌の1例

陳 豊史, 辰巳 明利, 寺澤 優代, 土居 裕幸, 中山 正
高知市立市民病院呼吸器外科, 同 呼吸器科

症例は,70歳男性.健診で右下肺野の異常影を指摘され近医で約10ヵ月間経過観察されていたが,徐々に陰影の増強を認めた.胸部単純X線およびCTでは,小嚢胞状の含気の混在する肺炎様浸潤影が主体であった.経気管支肺生検(TBLB)にて特発性間質性肺炎と診断し治療を開始したが,陰影の改善を認めなかった.再び施行したTBLBでは,悪性腫瘍が強く疑われたため,審査開胸し診断的右下葉切除術を行った.下葉は750 gで,外観は肝状であり,含気に乏しく牽糸性の粘液が充満していた.病理所見は,立方状から円柱状の腫瘍細胞が,既存の肺胞上皮を置換して散在性に下葉全体に増殖していた.腫瘍は,粘液形成が著明で,細気管支肺胞型腺癌と診断された.本例は,一葉限局型の細気管支肺胞型腺癌で,pT2N0M0であり,治癒切除を行い得たと考えられるが,術前診断の困難さから健診発見から手術まで約1年を要しており,経気道播種の可能性を考えて注意深い経過観察が必要と考える.
索引用語:Bronchiolo-alveolar carcinoma, Transbronchial dissemination, Surgical treatment, Transbronchial lung biopsy

受付日:1998年11月9日
受理日:1998年12月9日

肺癌 39 (1):63─67,1999

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