第39巻第2号目次 | Japanese/English |
─ 症例 ─
高分化腺癌の部分像を伴った肺巨細胞癌の1例
市村 秀夫, 遠藤 勝幸, 土井 幹雄*日立製作所日立総合病院外科, *筑波メディカルセンター病院病理科
症例は,70歳の男性.他疾患経過観察中に偶然,左上肺野の異常陰影を発見された.胸部CT写真では,左肺上葉S1+2a末梢に胸膜と接する径17×12 mmの空洞を有する結節影として認められた.当科紹介となり胸腔鏡下生検を施行し術中迅速病理診断で巨細胞癌と診断され,開胸左肺上葉切除術を施行した.病理標本における腫瘍最大径は18 mmで,リンパ節転移も認めず,末梢型早期肺癌であった. 1)病理組織学的に,高分化な腺癌の部分像が認められたこと,2)電顕的に巨細胞胞体辺縁に微絨毛を認めたこと,3)また免疫組織化学的にp53蛋白発現とMIB-1抗体の標識率を検討し,腺癌部と巨細胞癌部を比較すると,いずれの標識率も巨細胞癌部で高く認められたことから,本症例は肺腺癌が脱分化の過程を経て巨細胞癌となった可能性が高いと考えられた.
索引用語:Giant cell carcinoma of the lung, Dedifferentiation, Labeling index, p53 protein, MIB-1 (Ki-67)
受付日:1998年12月9日
受理日:1999年3月9日
肺癌 39 (2):177─182,1999