タイトル
第39巻第2号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

胸水adenosine deaminase活性が著しい高値であった縦隔原発T細胞性悪性リンパ腫の1例

竹下 啓1,3, 山口 佳寿博3, 橋詰 寿律2, 菊地 敬一2
1国立療養所神奈川病院内科, 2同 外科, 3慶応義塾大学内科学教室

症例は46歳の男性.背部痛を主訴に入院した.胸部単純X線,胸部CTで,巨大縦隔腫瘍と両側大量胸水を認めた.縦隔腫瘍の経皮的針生検でT細胞性リンパ芽球型悪性リンパ腫と診断した.胸水細胞診でも異型リンパ球を認めた.胸水は血性,滲出性で,胸水のadenosine deaminase活性(ADA)は963.2 U/Lと著しい高値であった.リンパ増殖性疾患において胸水ADAが高値を呈し得ることは報告されているが,一般に胸水ADAの高値は結核性胸膜炎の指標として用いられている.未熟なあるいは活性化されたT細胞からADAが産生されることが知られており,本例の胸水ADAはリンパ腫細胞から産生されたと考えた.著しい胸水ADAの上昇を認めた場合には,悪性リンパ腫,とくにT細胞性悪性リンパ腫も疑う必要がある.
索引用語:Malignant lymphoma, Pleural effusion, Adenosine deaminase

受付日:1998年11月13日
受理日:1999年3月9日

肺癌 39 (2):203─208,1999

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