第39巻第3号目次 | Japanese/English |
─ 症例 ─
肺癌歯肉転移例の臨床的検討
田中 理子, 澤田 めぐみ, 稲瀬 直彦, 市岡 正彦, 臼井 裕*, 吉澤 靖之東京医科歯科大学呼吸器科, *同 病理学講座
肺癌の歯肉転移症例3例を報告する.症例1は82歳男性.主訴は咳嗽,血痰.右肺腫瘤影および両側胸水を指摘され,肺腺癌と診断.1.5ヵ月後に左歯肉腫瘤が出現し,初診より2.5ヵ月で死亡.剖検で肺癌からの歯肉転移と確認された.症例2は71歳男性.主訴は血痰.右肺腫瘤影を指摘されたが確定診断を得られなかった.経過中に右歯肉腫瘤が出現し,横紋筋肉腫と診断された.歯肉腫瘤に放射線治療を施行し縮小傾向にあったが,転移性脳腫瘍による意識障害および呼吸不全が進行し,初診より5ヵ月で死亡.剖検で肺癌とその歯肉転移と診断された.症例3は63歳男性.右歯肉腫瘤及び出血で受診し,右肺腫瘤影を指摘された.生検で肺癌とその歯肉転移と診断.癌性胸膜炎進行のため初診より1.5ヵ月で死亡.肺癌歯肉転移症例の検討では,低分化型の肺癌が多く,病期が進行している例が多く予後はきわめて不良であった.治療が有効な症例の報告もあり早期の診断,治療が望まれると考えられた.
索引用語:Lung cancer, Metastasis to oral cavity, Gingival metastasis
受付日:1999年3月4日
受理日:1999年4月30日
肺癌 39 (3):323─329,1999