タイトル
第39巻第6号目次 Japanese/English

─ 原著 ─

杯細胞型粘液産生型肺腺癌の腫瘍間質特性

江藤 尚, 鈴木 春見, 太田 伸一郎**, 本多 淳郎
静岡県立総合病院呼吸器科, 県立愛知病院臨床研究検査部, **静岡県立総合病院呼吸器外科

杯細胞型粘液産生型肺腺癌15例を組織学的,画像形態計測学的,およびX線学的,臨床病理学的に研究した.腫瘍の原発巣では膠原化の乏しいcollapse型優位の線維化巣が小範囲に形成される.その早期から腔内粘液浮遊を伴って,線維化巣周囲正常様肺胞を壁の間質反応を伴わずに非連続的に被覆増殖する肺胞内進展を広汎に呈する特徴的な腫瘍増殖が起こる.腫瘍増大に伴い粘液充満による肺胞腔の拡張,粘液内への腫瘍細胞浮遊所見が顕著となる.これは腫瘍細胞の粘液産生性に惹起される特有な腫瘍間質形成に起因すると考えられる.画像解析では被覆増殖部の弾性線維網は周囲肺胞と同様か,過伸展している.X線像は腫瘍径と関連し,3 cmを境に特徴的な相違を呈した.再発は3 cm以上例の肺胞内再発が主体であった.本腫瘍は,X線像や臨床経過所見等からも,粘液非産生型肺腺癌とは区別される肺腺癌の一亜型で,本来のBronchioloalveolar carcinoma(BAC)と考えられる.
索引用語:Goblet cell type lung adenocarcinoma, Mucus-producing adenocarcinoma, Bronchioloalveolar carcinoma, Tumor stroma

受付日:1999年5月26日
受理日:1999年8月18日

肺癌 39 (6):813─820,1999

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