タイトル
第39巻第6号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

副甲状腺ホルモン関連蛋白発現による高Ca血症をともなった三重肺癌の1例

後藤 英子, 加藤 達雄, 河村 英博, 小牧 千人, 古橋 一利, 佐野 公泰
国立療養所岐阜病院呼吸器科

症例は64歳,男性.検診にて胸部異常陰影を指摘され,当科を受診.胸部CTにて左S1+2,右S10に腫瘤状陰影を認めた.組織診にて右S10の腫瘍は高分化型腺癌,左S1+2の腫瘍は低分化型腺癌であった.また,左B6aとB6b+cの分岐部にCIS様の粘膜変化を認め,扁平上皮癌と診断された.放射線療法と化学療法を併用したが効果なく,診断から1年10ヵ月後,血清Ca値の上昇とPTHrPの上昇を認めbisphosphonateの投与の効果なく,意識障害を伴い死亡した.抗PTHrP抗体にて免疫染色を行った結果,右S10の高分化型腺癌のみ陽性であったため,高Ca血症は右S10の高分化型腺癌より産生されたPTHrPによるものと考えられた.本症例は,扁平上皮癌,高分化型腺癌,低分化型腺癌の3つの組織型が同時に存在した同時性三重肺癌であり,さらに高Ca血症をきたした極めて稀な症例である.
索引用語:Triple lung cancer, Hypercalcemia, PTHrP

受付日:1999年3月8日
受理日:1999年7月9日

肺癌 39 (6):863─869,1999

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