タイトル
第39巻第7号目次 Japanese/English

─ 原著 ─

E1B欠失アデノウイルスによる原発性肺癌の遺伝子治療に関する実験的研究

真庭 謙昌, 安宅 啓二, 大原 忠敬, 清岡 一恵, 神吉 真紀子, 大北 裕, 濱田 洋文, 永田 正男**, 横野 浩一**
神戸大学第2外科, **同 老年医学(第4内科), 札幌医科大学分子医学

[目的]p53異常のある癌細胞で特異的に増幅するアデノウイルスを用いることで,肺癌症例に対するターゲッティングによる遺伝子治療の確立を目的として,基礎的検討を行った.[方法]ターゲッティングにAd5dlXウイルスからE1B55Kを欠失させたAxE1AdBを用いた.ターゲッティングの対象としてヒト肺癌細胞のうちp53変異のない小細胞癌SBC-3,p53変異をもつ小細胞癌SBC-5,腺癌PC-3,扁平上皮癌EBC-1を用いた.各細胞にAxE1AdBを感染させ,4日間培養後に細胞死を評価した.[結果]SBC-3ではウイルスの導入の有無で細胞死には変化は認められなかった.SBC-5,PC-3,EBC-1ではMOI 5以上で細胞増殖が抑制された.[結論]AxE1AdBがp53異常をもった肺癌細胞に作用し細胞障害をもたらすことが証明された.p53異常をもつ腫瘍細胞に対してのターゲッティングによる遺伝子治療の可能性が示唆された.
索引用語:Primary lung cancer, Gene therapy, Adenovirus, E1B, Targeting

受付日:1999年7月12日
受理日:1999年10月1日

肺癌 39 (7):975─980,1999

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