タイトル
第40巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

薄壁空洞を呈した原発性肺腺癌の1切除例

島谷 慎二, 笹本 修一, 加藤 信秀, 高木 啓吾, 山崎 史朗, 密田 亜希
東邦大学胸部心臓血管外科, 同 病理

薄壁空洞を形成した原発性肺腺癌を経験した.症例は59歳,男性.咳嗽,血痰,発熱を主訴に近医受診,胸部X線写真およびCT写真上,右上葉に直径約6.5 cm大の薄壁空洞を伴う陰影を認め当院紹介となった.精査にて原発性肺腺癌と診断,右上葉切除術を施行した.病理診断で低分化型腺癌と診断(P-T3N0M0),また空洞壁内には壊死組織凝血壊死像やfibrinの析出を認めた.空洞形成の原因は腫瘍内部の壊死によると考えられた.術後5カ月目に左肺野に同様の薄壁空洞が多数出現し転移と診断,その後も空洞は急速に発育し,10カ月目に癌死した.肺癌における薄壁空洞形成は比較的稀である.自験例における空洞形成の成因は病理所見,臨床経過などから癌細胞自体から分泌される蛋白分解酵素によるCell Autophagism説が疑われた.文献的考察を加え報告する.
索引用語:Primay lung cancer, Adenocarcinoma, Thin-walled cavity

受付日:2000年2月10日
受理日:2000年5月16日

肺癌 40 (4):287─291,2000

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