タイトル
第40巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

1980年代から1990年代への原発性肺癌の組織型の変遷とその背景因子の検討

岡本 佳裕, 山崎 浩一, 原田 敏之, 小島 哲弥, 本村 文宏, 上村 明, 広海 弘光, 小倉 滋明, 秋田 弘俊, 川上 義和
北海道大学医学部第一内科

1983年より1998年までに当科に入院した原発性肺癌患者755例,762病変の組織型の変遷とその背景因子について検討した.便宜的に前半8年間(1983~1990:1980年代)と後半8年間(1991~1998:1990年代)に分けて比較した.1980年代と1990年代では,原発性肺癌総患者数,男女比,喫煙率,発見動機,臨床病期,治療法に大きな変化はなかったが,平均年齢は1990年代が有意に低かった(平均1.5年,p<0.05).組織型では腺癌の比率が1980年代46.2%から1990年代56.9%と増加していた(p<0.005).特に男性(p<0.005),喫煙者(p<0.005),および50歳代,60歳代で腺癌の比率の増加を認めた.男性,喫煙者に絞って比較すると,1980年代では27%が腺癌だったのに対し,1990年代では46%と有意に増加し(p<0.001),一方で扁平上皮癌は1980年代42%から1990年代30%と減少していた(p<0.05).以上の結果は,原発性肺癌の臨床像が時代とともに変化することを物語る.今回の検討は1施設のみであるが,最近の肺癌の動向をつかみ,さらに今後の肺癌診療の対策を検討するために有用であると考えられた.
索引用語:Primary lung cancer, Histologic type, Adenocarcinoma, Squamous cell carcinoma, Time trend

受付日:2000年4月10日
受理日:2000年7月25日

肺癌 40 (6):609─614,2000

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