タイトル
第40巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

出血により急速な陰影増大をきたし硬化性血管腫類似所見を示した肺腺癌の1例

高橋 典之1, 武村 民子3, 常松 和則2, 菅原 洋行2, 田中 紳太郎2, 藤井 正範2, 安倍 十三夫4
1北海道立苫小牧病院胸部外科, 2同 呼吸器内科, 3日本赤十字社医療センター病理, 4札幌医科大学第二外科

症例は65歳男性.2年3カ月前に肺扁平上皮癌のため左上葉切除を施行された.今回血痰を主訴として発症し,右S8の円形腫瘍像が急速に増大したため,右下葉切除が施行された.病理所見にて腫瘍内の出血が著しく,一部硬化性血管腫に類似の組織像を示す低分化腺癌と診断された.免疫組織学的には腫瘍細胞はCEA,EMA,サイトケラチンが陽性であり,一部サーファクタント・アポプロテインAが陽性で,明確に硬化性血管腫と肺腺癌とを鑑別することは困難であった.本症例は,臨床的には急速な出血によって増大し,病理組織学的にも通常の肺腺癌とは異なり明瞭な腺管形成などがなく,腺癌の多彩性を示す稀な症例であった.本例は硬化性血管腫と末梢発生肺腺癌を肺胞上皮という発生母地からみて一元的なスペクトラムにある可能性を示唆する症例と考えられた.
索引用語:Pulmonary adenocarcinoma, Sclerosing hemangioma, Hemorrhage, Heterogeneity, Immunohistochemistry

受付日:1999年11月4日
受理日:2000年7月26日

肺癌 40 (6):661─665,2000

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