タイトル
第40巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

悪性胸膜中皮腫の基本組織型における中皮腫抗原発現の免疫組織化学的検討

泉 浩1, 熊坂 利夫1, 宮元 秀昭2, 山崎 明男2, 植草 利公3
1順天堂大学病理学第一, 2同 胸部外科, 3関東労災病院検査部

悪性胸膜中皮腫28例(上皮型19例,二相型5例,肉腫型4例)を基本組織型別に中皮腫陽性抗体および接着因子の発現ならびにその病理診断における有用性を検討した.対照として肺腺癌12例,限局性胸膜線維腫5例を用いた.胸膜中皮腫の各抗体陽性率はcalretinin 22/28(78.6%),thrombomodulin 10/28(35.7%),vimentin 16/28(57.1%),CAM5.2 28/28(100%),N-cadherin 26/28(92.9%),E-cadherin 2/28(7.4%),およびBer-Ep4 1/28(3.7%)であった.calretininは上皮型が16例陽性で特に管状乳頭状で染色性が強いが,thrombomodulinの上皮型陽性例は4例のみであった.vimentinは二相型,肉腫型で強い染色性を示すが,上皮型が7例のみ陽性であった.肺腺癌の各抗体陽性率はcalretinin, thrombomodulinおよびvimentinで低く,E-cadherinとBer-Ep4では高く,胸膜中皮腫との間で有意差を認めた.CAM5.2とN-cadherinは胸膜中皮腫,肺腺癌ともに高率に陽性を示し診断的意義はなかった.限局性胸膜線維腫はvimentinが全例陽性,calretinin2例弱陽性のほかは,CAM5.2,thrombomodulinおよびBer-Ep4はともに陰性であった.以上より,悪性胸膜中皮腫の診断には,calretinin陽性,Ber-Ep4陰性およびE-cadherin陰性が有用と考えられた.
索引用語:Malignant mesothelioma, Immunohistochemistry, Mesothelium-related antigens, Cadherin-family

受付日:2000年6月14日
受理日:2000年8月3日

肺癌 40 (7):711─717,2000

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