タイトル
第40巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

肺線維化巣における発癌機序の免疫組織化学的検討―特に血小板由来増殖因子(PDGF)との関連性について―

本間 栄1,2, 中田 紘一郎1,2
1虎の門病院呼吸器科, 2冲中記念成人病研究所

特発性間質性肺炎(IIP)に合併した肺癌症例の肺組織を用い肺線維化に関与するサイトカインの内,プロトオンコジーンでもあるPDGF-B蛋白の肺組織内局在,分布を検討すると同時にオンコジーン,細胞周期調節因子の発現との関連性を考察し肺線維化巣における発癌機序を形態学的に解明することを目的とした.対象は肺癌を合併したIIP,コントロールはIIPの急性増悪,膠原病に伴う間質性肺炎,原発性肺癌および健常肺で方法は剖検あるいは手術摘出肺組織を用いPDGF-B,PDGF Receptor-β,PCNA,c-myc,c-erbB-2,p53,p21およびp27それぞれの抗体を免疫組織学的方法(Avidin Biotin Complex法)により染色し肺組織内の局在,分布を顕微鏡下で形態学的に検討した.更に非RI in situ hybridization法でPDGF-BmRNAの発現も検討した.結果は肺癌を合併したIIP,IIPの急性増悪,IP-CVDの肺組織に認められる化生上皮細胞,異型肺胞II型上皮細胞および肺癌細胞において健常肺組織,慢性非活動期の肺線維化部分では認められないPDGF-B,PDGF-receptor-β,PCNA,c-erb B2,9E10,6E10,p53,p21,p27が種々な程度,頻度で陽性所見を示し,PDGF-BmRNAの発現もこれらの細胞において確認できた.尚,IIPではIP-CVDよりp53,p21の発現率が共に低くp21の発現がp53に依存的で平衡する傾向が認められた.ところが肺癌細胞ではp53は高くp21は低くその発現がp53に非依存的であった. 以上より肺線維化過程における末梢気腔細胞の増殖,癌化機構にこれらのプロトオンコジーン,オンコジーン,細胞周期調節因子の誘導発現,抑制ならびにそれらのネットワークが関与していることが示唆された.
索引用語:Pulmonary fibrosis, Lung cancer, Oncogene, PDGF, Cell cycle regulation

受付日:2000年6月23日
受理日:2000年8月16日

肺癌 40 (7):725─729,2000

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