第40巻第7号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
術前血清CEA値が高値を示したIA期肺癌の1例
森島 宏隆1, 中村 憲二1, 阪口 全宏1, 有広 光司2, 土井 美帆子3, 佐藤 功41国立呉病院呼吸器外科, 2同 病理, 3同 内科, 4香川医科大学放射線科
症例は65歳,男性.交通外傷のため近医に入院した時の胸部単純レントゲン検査で偶然右上肺野に直径6 mmの淡い陰影を指摘された.経過観察されていたが,約1年後の胸部単純レントゲン検査で腫瘤陰影が17 mm大に増大したため気管支鏡検査を施行された.擦過細胞診でClass IVが得られ,肺癌が疑われたため手術目的にて当院紹介となった.術前血清CEA値が11.1 ng/mlと高値を示したため消化器系などの重複癌を念頭に置き検査を進めたが,肺以外には病変が認められず,原発性肺癌の診断のもと右肺上葉切除術を施行した.腫瘍は右S2に存在し大きさは13×12×8 mm大で,p-T1N0M0,IA病期であった.術後2週間目の血清CEA値は1.8 ng/mlまで低下した.術後化学療法,放射線療法は施行せず,第18病日に退院した.術前血清CEA値が上昇している肺癌症例は進行期癌であることが多く,IA期肺癌では比較的まれであるので報告する.
索引用語:Lung cancer, Adenocarcinoma, Carcinoembryonic Antigen, Stage IA
受付日:2000年6月22日
受理日:2000年10月23日
肺癌 40 (7):787─790,2000