タイトル
第41巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

左側非小細胞肺癌に対するリンパ節郭清範囲の検討

中原 和樹1), 大瀬 良雄1), 田原 稔1), 守尾 篤1), 後藤 毅1), 益田 貞彦1), 薬丸 一洋2)
1)東京逓信病院第2外科, 2)同 病理

<目的>左非小細胞肺癌において,(1)N0,N1症例に対して上縦隔上部縦隔リンパ節(#1,2,3)の郭清は必要か,(2)N2症例に対する系統的拡大郭清(両側縦隔リンパ節郭清)は予後を改善するかを考察する.<対象・方法>左非小細胞肺癌切除例のpN0,N1,N2症例220例を対象として,上縦隔上部リンパ節の郭清の有無による予後と再発部位の相違,ならびにN2症例の肺葉別リンパ節転移部位,再発部位を分析した.<結果>pN0症例は114例で5生率は70.5%だった.郭清度別の比較では,完全郭清群が73.2%(n=27),不完全郭清群が69.5%(n=87)で有意差を認めなかった.pN1症例は48例で5生率は45.2%,郭清度別5生率は完全郭清群が37.9%(n=23),不完全郭清群が52.0%(n=25)で,ともに有意差を認めなかった.pN2症例は58例で原発部位は左上葉42例,左下葉16例だった.pN2症例の5生率は23.1%で,pN0,pN1症例に対し有意差を認めた.原発肺葉と縦隔リンパ節の転移部位の関係をみると,左上葉は#4,5,6,左下葉は#4,5,7のいずれかに転移を認めた.pN2症例で,術後再発をリンパ節だけに認めたのは左下葉が3例,左上葉1例だった.左下葉例は対側縦隔再発だったが,左上葉例は患側縦隔再発だった.<結論>(1)pN0,N1症例では,上縦隔上部リンパ節の郭清を省略できる可能性がある.(2)左肺のpN2症例に対する系統的拡大郭清は,下葉症例のうち#7に転移を認め,#1-4,#8,9に転移を認めない症例でのみ予後改善に寄与する可能性がある.
索引用語:Non-small cell lung cancer, Limited lymph node dissection, Extended lymph node dissection

受付日:2000年11月13日
受理日:2001年1月5日

肺癌 41 (1):51─57,2001

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