タイトル
第41巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

高槻市・島本町と周辺3市における肺癌死亡の動向の比較―肺がん個別検診の波及効果の評価―

福田 泰樹1), 後藤 功1), 関 順彦1), 芥川 茂1), 鈴木 ユリ1), 大上 隆彦1), 藤阪 保仁1), 閔 庚よう1), 花房 俊昭1), 大澤 仲昭2)
1)大阪医科大学第一内科学教室, 2)藍野加齢医学研究所

肺がん個別検診は,単なる肺癌早期発見のための手段としてだけでなく,検診参加医に肺癌発見のためのノウハウを広げる絶好の機会であり,その結果として地域の肺癌患者の予後を改善できる可能性がある.この間接的な波及効果を検証するために1985年から1996年までの12年間を,高槻市・島本町(T/S地域)において肺がん個別検診が安定して運営されるようになった1991年以後(後期)とそれ以前(前期)にわけて,同地域の肺癌死亡率を周辺3市(I/S/H地域)を対照として比較検討した.その結果,前期では10万人あたりの肺癌死亡率はT/S地域,I/S/H地域それぞれ37.0人と37.0人で全く同一であった(p=0.9787)が,後期にはそれぞれ45.8人,51.2人となり有意にT/S地域の方が低かった(p=0.0233). 近接した地域における肺癌罹患率が局地的に,わずか12年間の観察期間中に有意に低下するとは考えにくく,この死亡率の低下は高槻市・島本町における肺癌発見に関わる診療レベルが向上していることを示唆している.同地域の肺がん個別検診事業が1991年にほぼ確立され,運営されてきたことから,この診療レベルの向上が個別検診の波及効果によってもたらされた可能性が高い. 肺癌発見のためのノウハウを検診参加施設に広め,診療レベルを向上させるという波及効果を目標の一つとして,肺がん個別検診を企画し評価するべきである.
索引用語:Lung cancer screening, Lung cancer mortality, Ecological study

受付日:2000年8月23日
受理日:2001年5月7日

肺癌 41 (3):217─223,2001

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