第41巻第6号目次 | Japanese/English |
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─ 原著 ─
胸膜癌症の発症にかかわる肺靭帯の役割
劉 少雄1, 大城 久1, 加藤 靖文1, 2, 工藤 玄恵1, 海老原 善郎11東京医科大学病理学第二講座, 2東京医科大学外科学第一講座
p0/1肺癌でも胸腔洗浄液細胞診(PLC)中に癌細胞が出現する機序を理解するために,術中PLCに癌細胞が証明された43例と肺癌を含む担癌剖検例78例を用い,その肺靭帯,臓側・壁側胸膜を組織学的に調べた.手術材料では肺靭帯の組織挫滅が激しいため,同部を観察することは出来なかった.しかし,肺癌剖検例15例のうち8例(53.3%),肺癌以外の担癌剖検例63例のうち21例(33.3%)にはいろいろの程度の胸膜癌症があった.癌の組織型はすべて腺癌で,肺靭帯ではリンパ槽に腫瘍細胞塞栓をつくり,これがstomaを介して胸腔中に遊走する像も認められた.胸腔の場合,stomaを備えたリンパ槽は肺靭帯に密度高く存在する.胸膜癌症が肺靭帯に始まることはこの装置がここに集中していることと密接に関係していると考えられた.従って,p0/1癌でもPLCに癌細胞が出現する現象は,癌細胞がこの部のリンパ管に到達していることを示すものである.
索引用語:Pleural carcinomatosis, Pleural lavage cytology, Pulmonary ligament, Lymphatic cistern, Stoma
受付日:2001年3月30日
受理日:2001年8月2日
肺癌 41 (6):643─648,2001