第41巻第6号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
緩徐な経過を有する粘液産生肺腺癌の1例
左近 織江1, 平澤 路生1, 大地 貴1, 伊藤 英司1, 佐藤 昌明2, 阿部 庄作11札幌医科大学第三内科, 2札幌医科大学病院臨床病理部門
症例は43歳男性.平成6年に胸部異常影を指摘されるも放置していた.平成11年に血痰,咳嗽を自覚し,前医を受診した.胸部X線写真では,左S6の腫瘤影と両側肺に多発性結節影が認められた.左S6の経気管支肺生検より腺様嚢胞癌と診断されていた.当院では,びまん性結節影を生検し,前医の病理像とあわせて検討した.篩状構造をとる悪性細胞の増殖がみられたが,周囲に粘液が著明に貯留し,腫瘍細胞が浮遊している像も一部分にみられた.免疫染色から,筋上皮細胞や管腔様構造に基底膜が存在しないことが判明した.そのため腺様嚢胞癌ではなく粘液産生肺腺癌と診断した.化学療法は無効であったが,平成13年7月現在全身状態に変化はない.緩徐な経過をとる粘液産生肺腺癌の1例を報告した.
索引用語:Mucous-producing lung adenocarcinoma, Slow-growing, Bronchial gland cell type adenocarcinoma, Adenoid cystic carcinoma
受付日:2001年4月26日
受理日:2001年9月19日
肺癌 41 (6):681─685,2001