タイトル
第42巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

手術までに12年の臨床経過を有した粘液非産生高分化乳頭型肺腺癌の1例

稲毛 芳永1, 角 昌晃2, 藤原 正親3, 山本 達生4, 石川 成美4, 鬼塚 正孝4
県西総合病院 1呼吸器外科, 2内科, 3病理, 4筑波大学臨床医学系外科

背景.緩徐に増大し10年以上の長い臨床経過を有する肺腺癌は稀であり,これまでの報告例はいずれも粘液産生性の気管支腺型あるいは杯細胞型の腺癌症例である.症例.症例は75歳女性.12年前に肺癌検診で異常を指摘されたが精査を受けなかった.血痰を主訴に本院を受診.左肺に6×4 cmの浸潤影を認め,精査治療目的で入院した.胸部CTでは左肺S4に7×4×3 cmのconsolidationを認め,精査にて左肺腺癌cT2N0M0,Stage IBと診断し,左肺上葉切除術及び縦隔リンパ節郭清術を施行した.切除標本では,腫瘍細胞が肺胞置換性に増殖する細気管支肺胞上皮癌様の像を主体とする粘液産生に乏しいクララ細胞型及び気管支表面上皮細胞型の高分化乳頭型腺癌で,病理病期はpT2N0M0,Stage IBであった.結論.本症例は,手術までに12年という長い臨床経過を有したクララ細胞型及び気管支表面上皮細胞型の粘液非産生高分化乳頭型腺癌であり,緩徐な増大を示す肺腺癌の中でも稀な症例と考えられた.
索引用語:肺癌, 粘液非産生, 高分化乳頭型腺癌, 細気管支肺胞上皮癌, Slow growing

受付日:2001年10月26日
受理日:2001年12月17日

肺癌 42 (1):35─40,2002

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