タイトル
第42巻第1号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (452K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

多発性脳転移で発見され術後7年間無再発生存中の原発性肺癌の1例

藤永 一弥1, 高尾 仁二1, 渡辺 文亮1, 金光 真治1, 新保 秀人1, 矢田 公1
1三重大学医学部胸部外科

背景.肺癌脳転移,特に同時性肺癌脳転移は予後不良とされているが,術後7年以上無再発生存中の1例を経験したので報告する.症例.60歳男性.頭痛を主訴に,当院脳神経外科を受診.精査にて右頭頂後頭葉領域と,右前頭葉に2つの腫瘍を認め多発性脳腫瘍と診断された.手術目的で精査中,右肺尖部に異常陰影を指摘され,原発性肺癌の脳転移が疑われ,平成6年1月に開頭下脳腫瘍摘出術を施行.腫瘍は扁平上皮癌であった.術後,病巣は完全摘出され周辺の浮腫も改善し,また他の部位への転移は認めなかったため,原発巣である肺癌に対して同年2月右上葉切除術+ND2bを施行した.腫瘍は,母趾頭大でS1にあり,壁側胸膜と癒着していたため,胸膜を一部合併切除した.術後診断は肺扁平上皮癌(T3N1M1)で,脳腫瘍の原発巣と考えられた.脳腫瘍摘出後は,全脳照射を行ったが,肺癌に対する補助療法は行っていない.術後7年以上経過した現在再発の兆候はなく,外来通院中である.結論.同時性肺癌脳転移においても全脳照射を併用した積極的なcombined resectionにより,生命予後及びQOLの改善が期待できると考えられる.
索引用語:肺癌, 同時性多発性脳転移, 原発巣転移巣切除, 長期生存

受付日:2001年10月24日
受理日:2002年1月7日

肺癌 42 (1):45─49,2002

ページの先頭へ