タイトル
第42巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

乳癌歴患者に発生した肺腫瘍(腺癌)の組織学的鑑別におけるThyroid Transcription Factor-1(TTF-1)の有用性

吉澤 潔1, 吉田 卓弘2, 中川 靖士2, 三浦 一真2, 森田 純二2, 荻野 哲朗3, 瀬津 弘順4
高松赤十字病院 1呼吸器外科, 2外科, 3病理部, 4徳島文理大学薬学部機能形態学

目的.乳癌の治療歴を有する患者においては,しばしば乳癌の肺転移と原発性肺腺癌との鑑別が困難なことがある.Thyroid Transcription Factor-1(TTF-1)が両者の鑑別に有用であるか否かを免疫染色によって検証した.対象および方法.乳癌の既往歴を有する患者から11例の肺腺癌組織標本が得られた.病理学的診断はH-E染色によってなされていた.肺腫瘍と乳癌標本の切片にTTF-1とEstrogen Receptor(ER)のモノクロナル抗体を用いた免疫染色を行った.肺腫瘍には10例の乳癌肺転移と1例の原発性肺腺癌が含まれていた.8例においては乳癌原発巣についても同様の方法の検索が行われた.結果.TTF-1は10例の転移性肺腫瘍では全て陰性であり,原発性肺癌と診断された1例のみが陽性であった.一方,ERは原発性肺癌の病巣では陰性で,乳癌の肺転移10例のうち8例で陽性であった.転移性肺腫瘍で,ERが陰性であった2例では乳癌原発巣もまた陰性であった.この検索方法は肺腫瘍の生検組織にも用いることができた.結論.TTF-1抗体とER抗体を用いた免疫染色は原発性肺腺癌と乳癌肺転移を鑑別するために有用である.
索引用語:Thyroid transcription factor-1(TTF-1), エストロゲンレセプター(ER), 転移性肺腫瘍, 乳癌, 肺癌

受付日:2001年11月12日
受理日:2002年2月7日

肺癌 42 (2):105─111,2002

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