タイトル
第42巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

経気道転移により広範な肺胞性陰影を示した粘液非産生性肺腺癌の1例

叶内 哲1, 星 俊子1, 星 永進2, 河端 美則3
埼玉県立循環器・呼吸器病センター 1放射線科, 2呼吸器外科, 3検査部

背景.肺腺癌,特に粘液産生性細気管支肺胞癌は,しばしば経気道転移を起こし,胸部X線写真や胸部CTで肺胞性陰影を呈することがある.我々は,粘液非産生性乳頭型腺癌でありながら,著明な経気道転移のために広範な肺胞性陰影を呈した症例を報告する.症例.73歳男性.平成10年9月に肺癌に対して右中葉切除およびS3,S8部分切除を施行した.組織型は粘液非産生性中分化型乳頭型腺癌で,中心部には線維化を伴い,辺縁部では立方状の癌細胞が肺胞壁を被覆したり肺胞壁との連続を持たずに肺胞腔内に浮遊し充満する像を認めた.葉間胸膜を越えるS3への進展があり,pT3N0M0,stage IIIAであった.1年後右S6に転移が出現し部分切除を受けた.さらに1年後右S2に腫瘤と下葉に広範な肺胞性陰影が出現し,右肺切除が施行された.S2の腫瘤は中心部に線維化を伴う中分化型乳頭型腺癌で,下葉には広範な癌細胞の肺胞腔内への浮遊を認めた.結論.肺胞性陰影は,経気道性に広範な転移をきたした結果と考えられた.本症例は間質の線維化を伴う粘液非産生性乳頭型腺癌で,経気道転移により広範な肺胞性陰影を呈した特殊な例であった.
索引用語:肺癌, 粘液非産生性腺癌, 肺胞性陰影, 経気道転移

受付日:2001年12月3日
受理日:2002年2月13日

肺癌 42 (2):139─143,2002

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