タイトル
第42巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

宮城県における肺癌検診の有効性評価―数学モデルによる計算―

飯沼 武1
1放射線医学総合研究所

目的.本研究は宮城県で行われた肺癌検診の症例対照研究がオッズ比0.54という好成績を出したことに対して,その信憑性を確かめるために別の方法論を使ってその成績を検討した.方法.overdiagnosis群を考慮した決定論的癌検診モデルを用いて,検診群と対照となる検診不介入群を想定し,両群の死亡数から相対リスク(RR)とリスク差(RD)を計算し,前述のオッズ比と比較した.モデルに代入する数値は宮城県の成績を利用した.その中にはスクリーニング検査の感度,精検受診率,検診群の致命率,不介入群の致命率などが含まれる.結果.代入した数値の中で最も重要なものは検診群の致命率であって,宮城県の成績は39%と極めて好成績であった.これらの数値をもとに計算したRRは検診群にoverdiagnosisが存在しないとした場合で,0.65~0.71で仮定した致命率に依存した.この値は症例対照研究で報告されたオッズ比0.54よりは悪いが,統計的に有意な減少であった.結論.宮城県の現行の肺癌検診は数学モデルによる計算でもRR=0.65-0.71となり,それは統計的にも有意な減少であった.しかし,この数値は日本全体には当てはまらない可能性が大きい.
索引用語:肺癌, 宮城県肺癌検診, オッズ比, 相対リスク, 数学モデル

受付日:2002年2月7日
受理日:2002年3月5日

肺癌 42 (3):169─173,2002

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