タイトル
第42巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

集学的治療を行った脳転移を伴う肺原発絨毛癌の1例

志村 龍飛1,2, 戸島 洋一1, 西脇 徹2, 阿部 典文3, 小檜山 律3, 松谷 章司4
1東京労災病院呼吸器内科, 2千葉大学呼吸器内科, NTT東日本関東病院3呼吸器科・肺外科, 4病理診断科

背景.絨毛癌は通常,女性で妊娠に関連して絨毛細胞から発生する腫瘍であり,稀に男性で睾丸腫瘍として発生する.肺原発絨毛癌はきわめて稀であり,報告例の多くは予後が不良である.症例.42歳男性.初発症状は脳転移による痙攣であったが,その2年前に胸部X線写真・CT写真にて右上葉に嚢胞壁に接する腫瘤が確認されており,同腫瘤が増大・分葉化していた.経皮的肺生検では巨細胞癌と診断された.脳以外に転移がなかったため,脳腫瘍摘出後,原発巣に対しても手術(右上葉・胸壁合併切除)を行った.術後の病理診断は絨毛癌であったため,睾丸も検索したが異常は認められなかった.肺絨毛癌は高率に転移再発することが知られているため,術後胸部放射線治療(40 Gy)とCDDP+VP-16による化学療法を4コース行った.術後1年6カ月間経過するが血清hCG値の再上昇,画像上の再発は認められない.結論.脳転移を伴いながら集学的治療により術後1年6カ月間再発を認めない男性肺絨毛癌症例を経験した.肺原発絨毛癌は稀な腫瘍であり,hCG産生巨細胞癌との異同について議論があるが,手術と術後補助療法によって予後が改善する可能性がある.
索引用語:肺原発絨毛癌, 男性, 脳転移, 外科手術

受付日:2002年5月13日
受理日:2002年6月27日

肺癌 42 (6):601─605,2002

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