タイトル
第42巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

小腸再発転移巣からのG-CSF産生を認めた原発性肺癌の1例

江口 圭介1,2, 小林 紘一1
1川崎市立川崎病院呼吸器外科, 2慶應義塾大学医学部外科

背景.Induction chemotherapy後の再発において小腸転移巣からのgranulocyte-colony stimulating factor(以下G-CSF)の産生を認めた原発性肺癌の1例を報告する.症例.55歳男性.検診で胸部異常陰影を指摘されて当院を受診,手術療法と術前後の化学療法(CBDCA+CPT-11)を計3クール施行した.術前化学療法は著効し,切除検体よりlarge cell carcinoma with mucinと診断された.術後約5か月に縦隔リンパ節再発が発見されGEM単剤による治療を開始したが,経過中に大量下血と,血清G-CSF高値を伴う末梢血白血球(好中球)数の異常増多を認めた.出血源である小腸多発転移巣の可及的切除により,一時的に下血は減少し,血清G-CSF値の低下とともに末梢血好中球数も減少したが,患者は肺手術後約10か月で死亡した.結論.原発巣には認められなかったG-CSF産生が,Induction chemotherapy後の小腸転移再発とともに確認されるようになった本症例の臨床経過はG-CSF産生肺癌症例の中でも特異的である.
索引用語:術前化学療法, 肺癌小腸転移, G-CSF産生腫瘍

受付日:2002年7月1日
受理日:2002年8月6日

肺癌 42 (6):619─623,2002

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