第42巻第7号目次 | Japanese/English |
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─ 第17回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─
<EBMに基づく肺癌診療のPros and Cons> 2.P53など分子マーカーの解析は,臨床で意義があるか
Con:大江 裕一郎11国立がんセンター中央病院肺内科
肺癌診療での分子マーカー解析の意義は,予後因子,抗がん剤感受性の予測,診断などであろう.分子マーカーと予後との相関を調べた報告は数多い.しかし,臨床的に有用な予後因子と統計学的に有為な予後因子は区別して考える必要がある.予後因子として臨床的に意義のある差とは,病期やPSのように疑う余地のない違いであり,meta-analysisなどによってはじめて証明される僅かな違いには統計学的に有意な差であっても予後因子としての臨床的意義は見出せない.分子マーカーの状態により抗がん剤の感受性が異なるとの報告は数多い.しかし,分子マーカーの状態を調べて抗がん剤を選択するいわゆるオーダーメイド治療が従来の治療法と比べて優れていることを証明する為には比較試験が必要である.また,近年の分子標的治療薬の進歩はめざましく分子マーカーそのものが治療の標的となっている.肺がんに対してもEGFRのチロシンキナーゼ阻害剤であるゲフェニチブ(Iressa:ZD1839)が注目されているが,現在のところEGFR発現と抗腫瘍効果に関連があるか否かは明らかでない.ゲフェニチブの治療効果を予測する分子マーカーの開発は医療経済の観点からも非常に重要と考えられ,近い将来,実用化することを期待したい.
索引用語:肺癌, 分子マーカー, 予後因子, ゲフェニチブ, 分子標的治療薬
肺癌 42 (7):758─762,2002