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第42巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 第17回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─

<EBMに基づく肺癌診療のPros and Cons> 4.IIIA期N2非小細胞癌の標準的治療はInduction Chemotherapy+Surgeryか

Pro:坪井 正博1, 加藤 治文1
1東京医科大学外科第1講座

IIIA期非小細胞肺癌(NSCLC)に対する外科治療成績は,臨床病期で5年生存率34%,病理病期のそれは28%であり,極めて不良である.特に縦隔リンパ節転移陽性例の多くは遠隔転移で再発し,この病期における集学的治療の確立は急務である.90年代前半までの抗がん剤を用いた化学療法や放射線療法が,術後補助療法として生存期間の延長に寄与するという明らかなデータはない.一方,IIIA期NSCLCに対する術前化学療法の有用性が60例規模の2つの臨床第III相試験で示されている.また,フランスから報告されたIB~III期NSCLC,335例を対象とする術前化学療法の比較試験では統計学的な有意差はなかったものの,化学療法群が長期生存率を改善する傾向が報告された.外科切除に勝る局所療法はないとする観点と現在のevidenceに基づけば,N2 diseaseに対する治療戦略は導入化学療法+外科手術という集学的治療が最もpromisingであり,この病期の治療成績向上のbreakthroughとなりうる.今後は導入療法として有用な戦略は,化学療法なのか,放射線化学療法なのかを検証することなどが肝要である.
索引用語:III期非小細胞肺癌, 導入化学療法, 導入化学放射線療法, 手術療法, 手術成績

肺癌 42 (7):777─781,2002

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