タイトル
第43巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

Acinetobacter baumanniiが起炎菌と考えられた肺癌術後周術期肺炎の1例

高砂 敬一郎1, 中島 由槻2, 白石 裕治2, 葛城 直哉2, 吉田 聡子2
1信州大学医学部外科学第二講座, 2(財)結核予防会複十字病院呼吸器外科

背景Acinetobacter baumanniiは近年欧米ではICUにおける院内感染の起炎菌として注目されており,その臨床経過は重篤で死亡率も高い.症例.76歳,男性.肺気腫にて当院通院中に撮影した胸部CTで腫瘤影を指摘されたため精査施行,右下葉原発のsquamous cell carcinomaと診断され右下葉切除術,リンパ節郭清術が施行された.術後第2病日,突然ショック状態となり胸部X線写真では右上葉全体に及ぶ透過性の低下を認めた.胸部CTでは肺実質は広範囲の高吸収域とair bronchogramを認めた.血液検査では敗血症,pre DICの状態を呈していた.喀痰,胸水の培養でAcinetobacter baumanniiが検出され,IPMおよびABPC/SBTが投与されたが症状の改善なく,胸部X線写真上透過性の低下は中葉にも及び40度台の発熱を認めたため残存肺からの壊死物質の流出を防ぐため術後第8病日,右残存肺摘出術を施行した.その後全身状態は改善傾向を認めたが術後第12病日突然心室性頻拍となり死亡された.摘出肺の病理所見では好中球の強い浸潤を認め,大葉性肺炎の像を呈していた.結論Acinetobacter baumanniiによる感染症は今後本邦においても院内感染の起炎菌として注意が必要と思われる.
索引用語:Acinetobacter baumannii, 肺癌, 手術, 肺炎

受付日:2002年7月22日
受理日:2002年12月9日

肺癌 43 (1):59─63,2003

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