タイトル
第43巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

膜性腎症を合併した肺腺扁平上皮癌の1例

野畑 浩一1,3, 辻 博1, 笠井 孝彦2, 藤村 政樹3, 石浦 嘉久3, 中尾 眞二3
黒部市民病院 1内科, 2病理, 3金沢大学大学院細胞移植学呼吸器内科

背景.肺癌に膜性腎症を合併する症例はしばしば経験されるが,その因果関係については明確にされていない.症例.69歳,男性.右背部痛を主訴として来院した.胸部X線写真にて右上葉に異常陰影を指摘され,気管支鏡下生検にて低分化肺扁平上皮癌(T2N3M0 Stage IIIB)と診断された.また蛋白尿もみられ,入院時の1日尿蛋白量は2.6 gであった.cytokeratin 19 fragment(CYFRA21-1)は39.1 ng/mlと高値であった.carboplatinとdocetaxel hydrateによる化学療法を5クール施行し,腫瘍は縮小し,CYFRA21-1も低下(7.1 ng/ml)するとともに,尿蛋白量も減少した(0.1 g/day).退院後,肺癌は再び増大し,最終的には呼吸不全に陥り死亡した.剖検によって,原発巣の組織型は腺扁平上皮癌,腎病変は膜性腎症であることが示された.結論.自験例は尿蛋白の経過がCYFRA21-1の変化と一致した膜性腎症合併肺腺扁平上皮癌症例であり,肺癌と膜性腎症との関係を考察する上で興味深い症例と考えられた.
索引用語:肺癌, 腺扁平上皮癌, 膜性腎症, Cytokeratin 19 fragment

受付日:2002年11月25日
受理日:2003年1月6日

肺癌 43 (2):137─141,2003

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