タイトル
第43巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

日本病理剖検輯報1958~97年度症例による肺多発癌(特に三重癌以上)の頻度,内容と原発部位の検討

森田 豊彦1
1国立国際医療センター病理

目的.著者は日本病理剖検輯報(輯報)の1958年度から35年分の二重癌を中心にした肺多発癌につき検討し,肺癌 1997; 37: 283-294に報告した.今回は1958年度から40年分の肺三重癌以上を中心に,肺に癌が多発する背景,規則性を探った.対象および方法.輯報の40年間の男性肺三重癌以上41例,女性肺三重癌9例につき,年度,年齢,病理組織型,肺癌発生の肺の左右,発生肺葉を因子に検討した.10年区分にI-IV期の4期に分け推移を見た.各症例の肺癌は主(致死的),従(非致死的)に分け,組織型分布と組織型の組合せを見た.結果.男性三重癌以上の肺癌症例との相対頻度は漸増していたが,肺多発癌中の割合はII-IV期に6%から4%に漸減を示した.男性三重癌以上のピークはIII-IV期にかけ60歳代から70歳代に上昇し,III+IV期三重癌以上は同時期肺癌に比し有意に高齢だった.男性主の肺癌には小細胞癌と大細胞癌,従の肺癌には腺癌と扁平上皮癌が有意に多かった.左右肺に分かれるものが男性90%,女性67%あり,他はすべて右肺のみに発生した.この男性の90%は,肺二重癌の67%に比し有意差があった.男女三重癌は2葉または3葉に分かれるものが圧倒的に多かった.結論.肺三重癌以上は肺二重癌に比し相対的にも頻度が低い.主と従肺癌の組織型分布からも小細胞癌と大細胞癌は扁平上皮癌と腺癌より致死的で悪性度が高いと考えられた.肺発癌刺激は1点よりも左右肺の各肺葉に広く作用することが示唆された.
索引用語:肺三重癌以上, 男女と年齢, 主と従肺癌, 病理組織型, 肺の左右と肺葉

受付日:2002年9月3日
受理日:2003年2月27日

肺癌 43 (3):237─246,2003

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