タイトル
第43巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

肺腺癌細胞におけるCremophor ELによるetoposide(VP-16)の殺細胞効果増強についての検討

須金 紀雄1, 辻野 一郎1, 山崎 哲男1, 高橋 典明1, 赤柴 恒人1, 澤田 海彦1, 堀江 孝至1
1日本大学医学部内科学講座内科一

目的.cyclosporin Aの溶媒として用いられているCremophor ELのetoposide(VP-16)の抗腫瘍効果増強についてヒト肺癌細胞株を用いて検討した.方法.細胞生存率の測定には,ヒト肺腺癌細胞株(PC-14),ヒト類上皮癌細胞株(KB),ヒト肺小細胞癌細胞株(H69)に対してgrowth inhibition assayを行った.さらに,PC-14に対してはin vitro clonogenic assayも行った.各細胞系における抗腫瘍剤の細胞内蓄積量の差を[3H]VP-16を用いて比較検討した.MDR1(multidrug resistance)遺伝子の発現に関するmRNAの測定には,定量的PCR法を用いた.結果.PC-14において,in vitro clonogenic assayでCremophor ELの濃度が250 μg/mlの条件下ではVP-16単剤に対して100倍以上の殺細胞効果増強が認められた.VP-16の細胞内蓄積量はPC-14, A549(ヒト肺腺癌細胞株)において有意な増加が認められた.また,MDR遺伝子のmRNAの増幅はPC-14, A549において認められなかった.結論.Cremophor ELは肺腺癌細胞におけるVP-16の殺細胞効果を増強し,これはVP-16の細胞内蓄積量の増加が原因と考えられた.そしてこの現象は,MDR遺伝子の発現に関連したものではないと考えられた.
索引用語:クレモフォーEL, エトポシド, 肺腺癌細胞, 殺細胞効果, 多剤耐性

受付日:2002年12月6日
受理日:2003年6月2日

肺癌 43 (4):307─313,2003

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