タイトル
第43巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

βカテニン遺伝子に変異が認められたwell differentiated fetal adenocarcinomaの1例

森 正一1, 関戸 好孝2, 重光 希久生1, 吉岡 洋1, 今泉 宗久1, 下方 薫3
名古屋大学 1医学部胸部外科, 2医学部附属病院予防医療部, 3医学部呼吸器内科

背景.well differentiated fetal adenocarcinoma(WDFA)は稀な原発性肺腫瘍であり,その発癌過程における遺伝子変異の報告はほとんどない.症例.38歳男性.胸部異常影の精査治療を目的に当院を紹介された.遠隔転移がないことを確認した後,左肺上葉切除および縦隔リンパ節郭清術が施行された.術前の経皮針生検で肺腺癌と診断されたが,術後の永久組織標本ではWDFAと確定された.p53遺伝子,βカテニン遺伝子,KRAS遺伝子の変異解析を行ったところp53遺伝子およびKRAS遺伝子には変異は認められなかったが,βカテニン遺伝子エクソン3のコドン37にTCT(セリン)からTGT(システイン)へのミスセンス変異が認められた.さらに免疫染色でシナプトフィジン,CD56に陽性を呈し神経内分泌細胞への分化を示した.結論.βカテニン遺伝子変異がWDFAの発癌過程に関与している可能性が示唆された.
索引用語:肺芽腫, カテニン, 遺伝子変異, 免疫組織

受付日:2003年1月17日
受理日:2003年6月9日

肺癌 43 (4):351─355,2003

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