タイトル
第43巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

胸膜肺摘除術後に胸腔内灌流による温熱化学療法を行ったびまん性悪性胸膜中皮腫の1例

由佐 俊和1, 安川 朋久1, 国友 史雄2, 山本 司2, 尾崎 大介3
千葉労災病院 1呼吸器外科, 2内科, 3病理科

背景.びまん性悪性胸膜中皮腫に対する標準的治療法はいまだ確立されておらず,種々の治療法が試みられている.われわれは本疾患に対して,胸膜肺摘除術後に胸腔内灌流による温熱化学療法を行った症例を経験したので報告する.症例.62歳,男性.平成11年2月,感冒様症状にて近医を受診した.左胸水貯留を指摘され経過観察されていたが,胸水増加のため同年10月,当院へ紹介された.胸腔鏡下胸膜生検にてびまん性悪性胸膜中皮腫と診断し,平成12年1月,左胸膜肺摘除兼縦隔リンパ節郭清術および横隔膜合併切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検査では,壁側胸膜はびまん性に腫瘍で占められ,一部で腫瘍細胞の胸膜下脂肪組織内への浸潤を認めた.手術の5ヵ月後,胸腔内灌流による温熱化学療法を行った.胸腔鏡下に胸腔内を観察の後,CDDP(20 μg/ml)を含む42~43℃の生理的食塩水で胸腔内を60分間灌流した.術中および術後は特に合併症なく経過した.切除術後3年現在,再発を認めず外来にて経過観察中である.結論.胸腔内灌流温熱化学療法の有効性については今後の検討に待たねばならないが,本療法はびまん性悪性胸膜中皮腫切除術後の局所再発防止を目的としたアジュバント療法の一つとして検討されてもよい治療法と考える.
索引用語:びまん性悪性胸膜中皮腫, 胸腔内灌流温熱化学療法, 胸膜肺摘除術

受付日:2003年3月20日
受理日:2003年6月10日

肺癌 43 (4):357─361,2003

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