第43巻第6号目次 | Japanese/English |
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─ 原著 ─
肺全摘術後の対側肺切除症例の検討
桜井 裕幸1, 鈴木 健司1, 渡辺 俊一1, 浅村 尚生1, 土屋 了介11国立がんセンター中央病院呼吸器外科
目的.片肺全摘術後に対側肺切除術が施行された症例につき,対側肺切除の妥当性を検討した.方法.1987年から2002年までに施行された片肺全摘術383例中,その術後経過中に対側肺切除が施行された4症例(1%)を対象とし,腫瘍の組織型・病期,対側肺腫瘍切除前後の呼吸機能,全摘術後対側肺腫瘍出現までの期間,対側肺切除術式,術後合併症,再発・予後につき調査した.結果.片肺全摘術時の腫瘍の組織型は腺癌2例,扁平上皮癌1例,腺様嚢胞癌1例で,病期はIA期1例,IIB期2例,IV期1例であった.片肺全摘後対側肺腫瘍出現までの期間は7~53ヶ月,平均25.5ヶ月であった.対側肺腫瘍は全例肺野末梢に存在し,術式は全例肺部分切除であった.術後合併症を2例に認め,いずれも呼吸器系合併症で,1例は術後5ヶ月で呼吸不全死した.再発は2例に認め,1例は気管再発に対し,ステント留置および放射線治療にて術後78ヶ月担癌生存中である.他の1例は術後63ヶ月で癌死した.結論.片肺全摘術後の対側肺切除は,異時性原発が疑われる腫瘍が末梢に存在し,かつ小型腫瘤で,肺部分切除で呼吸機能の低下を示さず,治癒切除が望める場合に治療の選択肢の1つとみなされた.
索引用語:肺全摘術, 肺切除, 多発肺癌, 手術適応
受付日:2003年5月14日
受理日:2003年6月30日
肺癌 43 (6):699─703,2003