タイトル
第44巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

好酸球性胸水を呈したGM-CSF,G-CSF産生性悪性胸膜中皮腫の1例

則行 敏生1, 奥道 恒夫1, 木村 厚雄1, 赤山 幸一1, 古賀 理恵1, 武島 幸男2
1国家公務員共済組合連合会吉島病院外科, 2広島大学大学院医歯薬学総合研究科病理学

背景.悪性胸膜中皮腫は比較的稀な腫瘍であり,画像所見,胸水所見からの診断は困難なことが多い.好酸球性胸水を呈したgranulocyte-macrophage colony-stimulating factor(GM-CSF),granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)産生性悪性胸膜中皮腫の1例を報告する.症例.65歳,男性,2002年7月29日右胸背部痛のため当院入院となった.胸水,血液検査,胸部CT所見より好酸球性胸水(胸膜炎)と考えられ,ステロイド内服による診断的治療が施行されたが症状の進行を認めたため,9月17日胸腔鏡下胸膜生検を施行し,悪性胸膜中皮腫(二相型)と診断した.また,経過を通じて白血球,好酸球増多を認め,血清G-CSFは50 pg/dlと高値であり,抗GM-CSF抗体,抗G-CSF抗体による免疫染色では腫瘍細胞のほとんどの細胞質と約5%の細胞質にそれぞれ陽性像を認めたことよりGM-CSFおよびG-CSF産生性腫瘍と診断した.腫瘍の進行,全身状態の悪化を認め,11月27日在院死となった.剖検で悪性胸膜中皮腫の壁側臓側胸膜,心外膜,横隔膜,腹膜,小腸,大腸への進展を認めた.結論.炎症反応陽性,治療抵抗性難治性胸水を認めた場合,悪性胸膜中皮腫も疑い早期に胸腔鏡下生検で確定診断を行うことが必要であると考えられた.
索引用語:悪性胸膜中皮腫, GM-CSF, G-CSF, 腫瘍随伴症候群, 好酸球性胸水

受付日:2003年5月26日
受理日:2003年11月10日

肺癌 44 (1):25─30,2004

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