タイトル
第44巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

粘膜内表層伸展を示した肺門部肺腺癌の1例

呉 哲彦1, 小田 誠1, 渡邊 剛1, 村上 眞也2, 野々村 昭孝3, 湊 宏3
金沢大学医学部 1心肺・総合外科, 3病理部, 2小松市民病院外科

背景.喀痰細胞診での肺門部肺癌の発見例はほとんどは扁平上皮癌であり腺癌はまれである.我々の経験した粘膜内を表層伸展する肺門部肺腺癌の1例を報告する.症例.58歳の男性.咳嗽を主訴に近医を受診し喀痰細胞診でClass Vと判定された.気管支鏡にて右上葉支B1,B2,B3分岐部に黄白色の粘膜褪色部位が見られ,同部位よりの生検で肺腺癌の診断を得た.胸部CTでは右上葉支から右主気管支にかけて気管支壁の肥厚が見られた.術前診断T1N0M0の肺門部早期肺腺癌の診断にて右肺管状上葉切除およびND2bのリンパ節郭清を施行した.術中病理診断にて右主気管支中枢側断端に癌の浸潤を認めたため,気管分岐部直下まで追加切除し中間気管支幹と端々吻合を行った.病理組織学上,末梢側はB1,B2,B3の亜亜区域支まで,中枢側は気管分岐部直前および中下葉支入口部2軟骨輪前までの範囲にわたり,粘膜に沿った伸展が高度な肺門部肺腺癌と診断された.術後病期はT3N0M0,IIB期であった.吻合部への放射線治療を追加し術後6年で再発の兆候は認めていない.結論.粘膜内を表層伸展する極めてまれな肺門部腺癌の1例について報告した.
索引用語:肺癌, 肺門部, 腺癌, 粘膜伸展

受付日:2003年6月20日
受理日:2003年11月19日

肺癌 44 (1):31─35,2004

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