タイトル
第44巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

多発性の異型腺腫様過形成(AAH)を合併した両側多発肺癌の1例

小原 則博1, 井上 啓爾1, 石松 祐二2, 高谷 洋2, 道津 安正2, 河合 紀生子3
長崎市立市民病院 1外科, 2内科, 3病理科

背景.異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia:AAH)は肺腺癌の前浸潤性病変と考えられ,肺腺癌の周囲に認めることがある.今回,多発性のAAHを伴う同時性両側多発肺癌の1例を経験したので報告する.症例.52歳,女性.主訴は咳嗽.2000年7月,CT検査で右S2に2.0 cm大の結節影と右上下葉に多数のground glass opacity(GGO)が認められた.さらに左上葉S1+2にも不整形の結節影を認め,その周囲に円形のGGOを認めた.以上より,多発性のAAHを伴う両側多発肺癌の診断にて手術を施行した.手術は右上葉切除および左部分切除を二期的に施行した.病理組織学的所見では右上葉の主病変,および左上葉の主病変は乳頭型腺癌で細気管支肺胞上皮癌(bronchioloalveolar carcinoma:BAC)を伴っていた.癌病巣周囲や他区域の病巣は様々な程度の異型性を呈する多発性AAHであった.患者は術後40ヶ月後の現在再発を認めない.結語.本症例はAAHよりBACへとadenoma-carcinoma sequenceによる進展を示唆する症例と思われた.
索引用語:異型腺腫様過形成, 多発両側肺癌

受付日:2004年1月19日
受理日:2004年2月25日

肺癌 44 (2):107─111,2004

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