タイトル
第44巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

術後8年間の経過観察をした大動脈弓下paragangliomaの1例

大浦 裕之1, 相川 広一1, 石木 幹人1, 冨地 信和2, 羽隅 透3, 橋本 邦久4
岩手県立中央病院 1呼吸器外科, 2病理診断センター, 3国立仙台病院呼吸器外科, 4圭友会病院

背景.今回,術後約8年間の長期経過を観察し得た稀な縦隔発生paraganglioma(以下PG)の1例を経験したので報告する.症例.48歳,男性.平成7年6月の検診にて左縦隔に異常影を指摘された.胸部X線写真上では,左第2弓付近より肺野に突出する境界明瞭な腫瘤影を認めた.胸部CTでは腫瘤はaorticopulmonary window(APW)に存在し大動脈弓と左主肺動脈に接していたが浸潤の有無は明瞭でなかった.術前各種血漿カテコラミンとその尿中代謝産物は正常値であった.手術:腫瘤は鶏卵大でAPWに存在し,周囲組織への浸潤傾向を認めた.心膜合併切除および左主肺動脈形成術を行い腫瘍を全摘出した.病理組織学的および免疫染色所見により縦隔発生のPGと診断された.また腫瘍細胞に明らかな悪性像はなかった.術後約8年経過した現在再発兆候なく健在である.結論.PGにおいては病理組織学的に良性と診断されても,その後の経過で遠隔転移など悪性の態度を示すものもあり,その良悪性の鑑別は必ずしも容易ではない.術後数年以上経過した後に遠隔転移した例も報告されており,今後も継続的な経過観察が必要と考えられた.
索引用語:傍神経節腫, 縦隔腫瘍

受付日:2004年2月24日
受理日:2004年3月26日

肺癌 44 (3):153─157,2004

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