タイトル
第44巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺癌切除肺の組織学的検索が契機となり診断しえた健康食品による薬剤性肺炎の1例

陳 啓盛1, 青山 克彦1, 松島 秀和2, 村井 克己1, 河端 美則3, 星 永進1
埼玉県立循環器・呼吸器病センター 1呼吸器外科, 2呼吸器内科, 3病理

背景.肺癌手術組織標本を詳細に検討することは,肺癌の組織型,悪性度,進行度のみでなく,特発性肺線維症の存在など背景肺病変の検索にも重要である.今回,我々は背景肺病変の検索を契機に診断しえた薬剤性肺炎を経験した.症例.症例は72歳の男性.右肺癌cT1N0M0,stage IAと診断し,右中葉切除術を施行した.術後第4病日に呼吸困難が出現,胸部X線上右下肺野に術直後には認めなかった新陰影が出現,抗生剤を投与するも急速に増悪した.胸部CTでは両肺野に広範なスリガラス陰影を認めた.肺癌切除肺の組織学的検索で急性好酸球性肺炎の所見が得られ,気管支肺胞洗浄液でも好酸球比率の増加を認めたため,陰影は急性好酸球性肺炎によるものと推察した.詳細な問診の結果,患者は入院前からアガリクス,メシマコブを含む健康食品を服用していたことが判明した.健康食品の服用中止のみで自覚症状,胸部X線所見が改善したため,本症例を薬剤性肺炎と診断した.結論.肺癌切除肺における背景肺の組織学的検索が契機となり,薬剤性肺炎を診断しえた.また,アガリクスなどの健康食品による薬剤性肺炎の報告例は少ないが,今後も注意すべきである.
索引用語:薬剤性肺炎, 急性好酸球性肺炎, アガリクス, 肺癌手術標本, 健康食品

受付日:2004年1月22日
受理日:2004年4月5日

肺癌 44 (3):167─171,2004

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