タイトル
第44巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

特発性血小板減少性紫斑病合併肺癌に対して,ヘリコバクターピロリ菌の除菌により,血小板減少の改善した1例

畠山 茂毅1, 佐尾山 信夫1, 三好 孝典2, 露口 勝2, 渡辺 滋夫3
1独立行政法人国立病院機構善通寺病院外科, 徳島市民病院 2外科, 3内科

背景.特発性血小板減少症(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)の原因に,ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori,以下HP菌)の感染があることが注目されている.我々は肺癌の化学療法中の制御しがたい血小板減少症に対して,HP菌の除菌により改善した症例を経験したので報告する.症例.56歳女性.平成13年7月,健診で血小板減少を指摘され,近医を受診した.胸部X線写真で胸水貯留を認め当科紹介となった.進行肺癌であり,フィブリン分解産物(fibrin degradation product:FDP)の上昇から,汎発性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)による血小板減少症と診断された.通常の治療では,DIC状態は改善せず,化学療法を併用すると改善がみられたが,月1回程度の血小板輸血は行われていた.その後も化学療法を続けていたが,14年5月頃からは,血小板数は常に2万/μl以下となり,頻回の血小板輸血が必要となった.FDPの再上昇はなく,platelet associated immunoglobulin G(PAIgG)も高値でITP合併肺癌と診断された.6月末,尿素呼気試験にてHP菌の感染が判明し,除菌により血小板減少は改善した.結論.肺癌治療中の血小板減少の原因として,癌性のDICや化学療法による骨髄抑制以外に,HP菌感染も考慮する必要がある.
索引用語:血小板減少症, 肺癌, ITP, ヘリコバクターピロリ

受付日:2004年1月28日
受理日:2004年4月19日

肺癌 44 (3):173─177,2004

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