タイトル
第44巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

脊髄・視交叉に転移をきたした肺小細胞癌の1例

谷口 浩和1, 阿保 斉2, 宮田 佐門2, 宮沢 秀樹3, 能登 啓文3, 泉 三郎1
富山県立中央病院 1内科, 2放射線科, 3呼吸器外科

背景.肺癌の脊髄や視交叉への転移は稀である.症例.65歳の男性で,当科にて右上葉原発の肺小細胞癌限局型T1N2M0と診断された.全身化学療法と同時胸部放射線照射を行われ,著効(CR)と判定された.初診より7か月後に,脳MRIにて多発脳転移が認められ,全脳照射(41.2 Gy/20回/29日間)を行った.その後,下肢に不全麻痺と両耳側半盲が出現した.胸腰髄MRIにて胸腰髄に多発転移を認め,髄液からClass Vの肺小細胞癌細胞が検出されたため,癌性髄膜炎と診断した.胸腰髄に放射線照射(57.5 Gy/15回/19日間)後,両下肢の不全麻痺はやや改善した.視力障害は徐々に増悪し,視神経周囲MRIにて,視交叉部に転移と考えられる腫瘤影が出現したため,同部に放射線を照射したが,視力は回復せず増悪を続けた.放射線照射によりやや改善を認めた両下肢の不全麻痺も再増悪を認め,徐々に四肢・体幹の麻痺が進行し,全身状態が悪化して,初診より1年6か月後に死亡した.結論.脊髄と視交叉への転移をきたした肺小細胞癌の1例を報告した.
索引用語:癌性髄膜炎, 肺小細胞癌, 脊髄転移, 視交叉転移

受付日:2003年11月21日
受理日:2004年4月21日

肺癌 44 (3):179─182,2004

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