タイトル
第44巻第7号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (141K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

肺線維症に重なる浸潤影のCT像を呈した肺扁平上皮癌の1例

斉藤 彰俊1,2, 小澤 克良3, 宮澤 正久4
市立甲府病院 1放射線科, 3呼吸器科, 4呼吸器外科, 2山梨大学医学部放射線医学講座

背景.肺線維症に合併する肺癌はしばしば浸潤影を呈し,その診断に苦慮する.症例.患者は68歳男性で,発熱と咳嗽を主訴に受診.CT上両側下葉胸膜下優位に蜂窩肺が認められ,肺線維症の所見であり,右下葉肺底区にはそれに重なる浸潤影が認められた.喀痰細胞診では扁平上皮癌疑いと診断されたが,喉頭にも上皮内癌があり,肺野の浸潤影については肺線維症に合併した肺炎として抗菌薬投与にて治療された.しかし1ヵ月後の経過で浸潤影はわずかに増大傾向を示し,腫瘍性病変が疑われた.気管支鏡が施行され,右B9・B10の気管支洗浄液の細胞診で扁平上皮癌が検出された.以上より右下葉の浸潤影が扁平上皮癌の病変であると診断され,右肺下葉切除術が施行された.病理組織像では広範な線維化の中に充実性胞巣が散在する中分化型扁平上皮癌で,壁側胸膜浸潤があり,T3N0M0,IIB期であった.結論.肺線維症に合併する肺癌の画像上の形態は,正常肺に発生するものと異なることを念頭において診断すべきである.
索引用語:扁平上皮癌, 浸潤影, 肺線維症

受付日:2004年8月12日
受理日:2004年10月13日

肺癌 44 (7):785─789,2004

ページの先頭へ