タイトル
第45巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

IκBα過剰発現による肺癌細胞の増殖抑制効果

緒方 じゅん1, 高山 浩一1, 倪 健1,2, 猪島 尚子1, 内野 順治1, 原田 聡子1, 南 貴博1, 原田 大志1, 中西 洋一1
1九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設, 2上海市肺科医院腫瘍科

目的.肺癌細胞にIκBα遺伝子を導入して転写因子NFκBの機能を阻害し,癌細胞の増殖および腫瘍形成における抑制効果についてin vitro及びin vivoで検討する.方法.肺癌細胞株として野生型p53遺伝子を有するNCI-H460細胞を用いた.アデノウィルスベクターによりIκBα遺伝子を同細胞へ導入し,細胞増殖の抑制効果をMTSアッセイによって評価した.また同細胞をヌードマウス皮下に移植して腫瘍を形成させ,IκBα遺伝子導入による腫瘍形成の阻害効果および腫瘍縮小効果について検討した.結果.IκBα遺伝子導入によりH460細胞の増殖抑制効果がみられたが,その機序としてcaspase 3の活性増強によるアポトーシスの誘導が考えられた.また,IκBα遺伝子を導入したH460細胞はヌードマウスに腫瘍を形成できず,腫瘍形成後にIκBα遺伝子を導入した場合でも有意に腫瘍の増大が抑制された.治療後の腫瘍組織の免疫染色ではVEGFの有意な発現低下が認められた.結論.IκBα遺伝子は癌細胞にアポトーシスを誘導するだけでなくVEGFの産生抑制を介して腫瘍血管の新生を阻害し,抗腫瘍効果を発揮するものと考えられた.
索引用語:肺癌, 遺伝子治療, IκBα遺伝子, NFκB, VEGF

受付日:2004年8月11日
受理日:2004年12月15日

肺癌 45 (1):13─18,2005

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