タイトル
第45巻第3号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (309K)
Article in Japanese

─ 原著 ─

多施設共同研究グループによるびまん性悪性胸膜中皮腫51症例の臨床的検討

由佐 俊和1, 伊豫田 明2, 門山 周文3, 佐々木 一義4, 鈴木 実5, 山川 久美6, 藤澤 武彦2
千葉胸膜腫瘍研究会 1千葉労災病院呼吸器外科, 2千葉大学大学院医学研究院胸部外科学, 3さいたま赤十字病院呼吸器外科, 4県西部浜松医療センター胸部外科, 5千葉県がんセンター呼吸器科, 6千葉東病院呼吸器外科

目的.びまん性悪性胸膜中皮腫の臨床像・診断・治療・予後および予後因子について検討することを目的とした.対象.多施設から集積したびまん性悪性胸膜中皮腫51例を対象とした.結果.男性47例,女性4例,平均年齢60.0歳.アスベスト曝露歴を37%に認めた.発見動機は,ほとんど(88%)が自覚症状によるものであった.胸腔鏡下胸膜生検が確定診断法として最も多く行われたが,初診から診断が得られるまでに,60日(中央値)を要した.胸水の細胞診やヒアルロン酸値は,両者ともに異常所見を示さない例がおよそ半数にみられた.治療は,28例に手術が,13例に放射線もしくは化学療法が,10例には支持療法のみが行われた.全例の生存率は1年,2年,3年がそれぞれ50.6%,25.0%,12.7%で,生存期間中央値は12.3ヶ月であった.予後因子の分析では,単変量解析では年齢,IMIG臨床病期,手術の有無が有意な因子であったが,多変量解析では,IMIG臨床病期のみが有意な因子であった.術後補助療法として胸腔内灌流温熱化学療法を行ったものに良好な予後を示す例がみられた.結論.1)原因不明の胸水貯留例については,確定診断を得るために遅滞なく胸腔鏡下胸膜生検を行うべきである.2)適正な手術適応の設定,術後補助療法や新たな化学療法の開発などによる予後の改善が今後の課題である.
索引用語:びまん性悪性胸膜中皮腫, 胸腔鏡下胸膜生検, ヒアルロン酸, 胸膜肺摘除術, 温熱化学療法

受付日:2004年9月9日
受理日:2005年4月26日

肺癌 45 (3):241─247,2005

ページの先頭へ